「モドゥコン99(第一回身体改造★世界大会)」体験記(3)
まだまだつづく、「モドゥコン99(第一回身体改造★世界大会)」体験記、お楽しみください。
★舌先を切開するスプリット・タン
「モドゥコン」会場では、息詰まる改造手術の実演の合間に、トカゲになりたいとフリークス願望を語っていたリザードマン氏の火吹きのショーが行われていた。彼の容姿を説明するなら、顔面には、左右の額にインプラントされた1センチ大の突起が4つずづ並んでおり、口を開くと舌先は2つに引き裂かれ、腕一面にタトゥーでウロコが彫られていた。一見、見せ物小屋のフリークスのように見えるが、それをすべて不可逆な改造行為でやってしまっているところが凄い。
「数年もすれば、身体の外見そのものの全体的な変形が可能になるだろう。リザードマンは、インプラントとタトゥーでトカゲになろうとしているが、私は、ベルギーにいる『毛皮計画』というグループを知っている。彼らは、毛の移植と外科手術によって、自分たちを本物のライオンのようにしようとしている。」
BMEのシャノン氏が、嬉しそうに語った。彼によれば、インプラント技術を利用して、人間に本物の角をつけたり、発光ダイオードを埋め込んで、発光する「タトゥー」を施したり、さらには、「サイボーグ装置」を埋め込んで、本格的な機械人間への可能性が広がるかもしれないとまであるという。確かに、クローン技術や内臓移植、さらにはロボット・テクノロジーなど、以前は、絵空事だったことが、ここ数年で、あっさりと現実化されてしまっているのは、誰もが認める事実だろう。
「しかし、最も深刻な問題は、世の中には、こういう身体改造行為を全く受け入れられない人々がいることだろう。」
そういうと、シャノン氏が、自分の2つに裂けた舌を見せた。
ここで、舌先を2つに切り裂くスプリット・タンについて説明しておこう。舌を蛇のように2つに切り裂く行為は、歴史的にも過去の時代に実際に行われていたという記録もある。しかし、BMEで紹介されているようなスプリット・タンを最初に実践したのが、まさに前述したリザードマン氏である。彼は、自分が住んでいた街の美容整形医に頼み込んで、舌先を電気メスで2つに切り裂いてもらった。それも、一回目の切り口が小さかったために、さらにもう一度切ってもらったという。「僕が、スプリット・タンを成功させたあと、インターネットを通じて、10人くらいの人たちが、僕がやってもらったのと同じ病院で、スプリット・タンをしたよ。」
その中には、若い女性も含まれていたというからびっくりだ。リザードマン氏がスプリット・タンを成功させたのち、舌のピアス穴を拡張することでスプリット・タンを成功させたという事例も報告されるようになった。
「この先、人間は、身体の形や外見の制約を越えて、それらを自由に改造できる時代になっていくだろうな。」
そうシャノン氏が語った。世界身体改造大会は、そのあと深夜まで続いた。もう我々は後戻りできないところまで来ているのだろう。
★性器改造の末に到達するサイボーグ願望と未来のセックス
「テクノロジーやメディアを体内に取り込みたい願望が、ピアスやタトゥーのような痛みを伴う身体装飾の全世界的流行を生んだのさ。」
そう語ったのは、オーストラリアのアーティスト、ステラーク氏。彼は、70年代から身体と機械の融合をテーマにした斬新なパフォーマンスを続けてきた。
「今の若者たちは、将来、もっとハイテックな改造が登場すれば、迷わず試みるだろう。」
そのステラーク氏の言葉は、BMEやモドゥコンが推進しているボディ.モディフィケーション(身体改造)と繋がってくる。
ステラーク氏自身、70年代、目や口の縫合から始まり、身体に大きな釣り針を貫通させて全身を吊り下げるボディ・サスペンション、80年代以降は、精密なロボット義手を使った「第3の手」、実際に胃袋に小型ロボットを飲み込んで作業をさせたりしている。最近では、「第3の耳」と言われる人工耳の埋め込み手術のプランを提出しているほど。ステラーク氏も、BMEの身体改造マニアたちの存在を視野に入れていることは明らかだ。
「現代は、テレビやコンピューターがあふれた時代で、私たちは、現実的な経験よりも、メディアによって与えられた幻想によって支えられて生きている。だからこそ、我々は、強烈な肉体的経験を得ることによって、物事を理解したいと考えるようになるのだ。」
ステラーク氏は、21世紀は、人間と機械が融合するサイボーグ時代になるだろうと予想する。ここで、身体改造の最前線を一望してきた我々としては、性器改造によって究極の快感を追い求めている人たちや、人間の身体の限界を超ようとしている人たちこそが、人間という一線を超えて、サイボーグ時代への第一歩を踏み出してしまうのではないかと考えてしまいたくなる。
「アメリカには、誰もやったことがない、びっくりするような身体改造をやりたがっている連中がたくさんいるよ。」
そう語ったのは、インプラントの開発者スティーブ・ヘイワース氏だった。インプラント登場後、彼のもとにつめかけた多くの改造マニアたちも、まさにそういうタイプの連中だったのだろう。
例えば、性器の改造は、身体改造の中でも最もバリエーションが多く、人間のサイボーグ化は、性器の機械化から始めるということも予想される。もし、それが未知の快楽の扉を開くものならば、モドゥコンに参加するようなマニアなら、やってみようという人もいるだろう。
「身体改造の研究開発の過程で、人類の未来を決定づけるような『快楽の仕組み』が発見されるのではないか」
これが、筆者自身、「身体改造」シーンの取材を続けてきて、感じていることである。サイボーグ時代の未来のセックス、それは、すでにインターネット上で萌芽しているのだ。(完)
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