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2013年3月

2013年3月14日 (木)

16日まで、【現代・日本に風穴を開ける『死と未来』展】exhibition view

お陰さまで好評開催中の『死と未来』展も、16日(土)(最終日は午後5時まで)となりました。

たくさんのご支援、ご協力いただきありがとうございます!!

展示会場で実物大の作品と向き合うことでしか出来ない体験をぜひ!!

『死と未来』展のexhibition view を公開します。よろしくお願いします!!

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画廊に入って、すぐ右手。最初に目に飛び込んでくるのは「死」をテーマにした宮川ひかるの絵画作品。色反転した美しいターコイズ・ブルーに何を見い出すか。左隣りには、死体写真家・釣崎清隆の3.11の作品群が並ぶ。

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右手から、エリック・ボシックの殺人刀の写真作品、曽根賢(PISSKEN)の肉筆詩が続き、手前のインスタレーションは、ケロッピー前田のトレパネーションのための器具、右手奥には頭蓋骨に穴を開けた実践者のポートレート、頭蓋骨の穴の写真作品があります。


そして、正面の壁一面に映し出されたアリシア・キングの「シフターズ」。生理食塩水で顔面を膨らませる「ベーグルヘッド」の映像作品で、テクノロジーと人間の未来的な共生を表現しています。その右となりには、十字架の形に培養された皮膚の写真作品。バイオアートを専門とするアリシアならでは先端的な領域に挑む作品です。

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さらにぐるっと会場を見渡すと、十字の形に5つの作品が配置されたアイカワタケシの作品群。素材の選択も巧妙で実物を観てこそわかる質感を堪能して欲しい。そして、隣りには、CGかと思わせるほどに洗練されたカール・ドイルのフューチャードミナのフォト作品。

ひとつひとつの作品の密度の濃さもあって、じっくりをご覧いただいています。

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3月9日のアーティスト・トーク&プレゼンテーションも大盛況!! まだ観てない方は、お見逃しなく!!!

『死と未来』展って、なに?

という方には以下に解説文を載せます。しっかり、予習&復習で、充実の展示内容をご堪能ください!!

【現代・日本に風穴を開ける『死と未来』展】

 私、ケロッピー前田がキュレーターとして、厳選した国内外のアーティストを集め、新たなる時代のヴィジョンを提案しようというのが、3月4日から銀座ヴァニラ画廊で開催される『死と未来』展だ。そこでは、芸術表現の最もエッジな領域に踏み込み、いまやコンプライアンスに縛られたメディア空間では達せ得ないものを提示していきたい。

 まず第一に、『死と未来』展が目論むのは、出版メディアに先行し、ギャラリーという展示空間から時代を挑発していくことである。その昔、例えば、1968年創刊の澁澤龍彦責任編集『血と薔薇』や中平卓馬らの写真同人誌『provoke』は、その時代の閉塞感に風穴を開ける契機となった。我らが伝説の雑誌『BURST』も世紀末からミレニアムへの激変の時代に、世界と日本のアンダーグラウンド・カルチャーを結び合わせる役割を果たし得たと自負したい。だが、ネットメディアの時代となった今、主戦場をギャラリーに置き換えて挑みたいのだ。本展示では、『BURST』を支えた作家たちである、釣崎清隆の死体写真、アイカワタケシの左腕骨折ドローイング、初代編集長・ピスケンの肉筆詩、私、ケロッピーの頭蓋骨に穴を開けるトレパネーションの新作が披露される。

 そして第二に、副題をフランス語で「ラ・モール・エ・ル・フュチュール(死と未来の意)」としたのは、フランスの思想家ギー・ドゥボールのアナーキズムにあやかっている。ここで提示される未来は、管理されたディストピアに風穴を開けるものであり、アリシア・キングによる「ベーグルヘッド」の映像作品、写真家エリック・ボシックの殺人刀、カール・ドイルによる未来のドミナフォト、美術家・宮川ひかるのターコイズ・デス、それらは、自閉した日本に一撃を喰らわせる破壊力を持つものばかりだ。

 あえて震災を想起させる3月開催に拘ったのも、現代・日本に新たな覚醒を願ってのこと。画廊にて、その真価を確かめて欲しい。(ケロッピー前田)

16日(土)まで。15日(金)午後3時以降、16日(土)午後2時以降で在廊予定。最終日は、午後5時までですが、作家も揃うので、お目当ての作家に直接会えるチャンスです。ではでは、会場で。

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2013年3月 8日 (金)

バイオ・アートの女神アリシア・キング、『死と未来』展に参加!!

「わたしの細胞は誰のもの?」

育ててわかる細胞培養アートの命題

バイオ・アートの女神アリシア・キング]オーストラリアの女性アーティスト、アリシア・キングは、17歳のとき、頬の骨の異常を修正する大手術を受けた経験から、物質的な身体と“自分自身”との違和感を感じ始め、バイオテクノロジーを自らの身体で試みる人体実験的なアート作品の制作を始めた。

 「自分から取り出されたものを独立して育ててみたかった。それは私の一部なのか、ただの物なのか? 確かめたかったの」

 そう語るのは女性アーティストのアレシア・キング。彼女は自分の細胞組織を取って、培養するアート作品を2004年から制作している。彼女自身が説明している通り、人体組織がひとたび取り出されてしまったら、「それは誰なのか?」あるいは「誰のものなのか?」。そのような問題は、高度なバイオテクノロジーが医療現場で応用されるようになった近年、特に問題にされてきている。 「オーストラリアの研究所シンバイオティカの協力を得て、最初の作品は、HeLa細胞とマウスのハイブリッドを作ろうとしたの」

 HeLa(ヒーラ)細胞とは、1951年に子宮頸癌で亡くなったヘンリエッタ・ラックスから採取され、人類最初の細胞培養株となったもの。数々の医療実験に利用されると同時に、個人の細胞の利用について倫理的問題も議論されてきた。そして、07年からアリシアは自分の細胞組織の培養も始めている。

「太股から3センチ×1センチ程度の組織を取って、育てた。最終的には4センチ×5センチ程度に。牙で噛み切った『バンパイア』の形にしたの。身体の拡張を意識していたけど、あとで他人の細胞の培養を始めてからの方がなぜか興奮したわ」

 自分自身の細胞培養はパフォーマンスとしても行い、出来上がったものは滅菌して殺し、彫刻作品の一部に使っている。培養した細胞は法律的な問題で生きたまま研究所から持ち出せないのだ。しかし、アイルランドにあるサイエンス・ギャラリーでは、細胞培養を公開することが可能となった。

「人体組織銀行の4000ものサンプルから現在も生きている南アフリカの女性の細胞を選んで培養したの。他人の細胞を培養していると親近感が沸いて、自分の身体に取り入れてみたくなるから不思議ね」

 そう語るアリシア、細胞培養の果てに見る未来のヒューマニズの登場に期待したい。

ギャラリーに作られた培養タワーで育つ]アイルランドの「サイエンス・ギャラリー」に設置された約80センチのシリンダー。電極を介して電流が流され、培養液がポタポタと滴り落ちる。二重に仕切られたガラス容器の中で、人間の細胞が牙の歯形を模した形に育てられる過程が公開された。

[人体組織と私の存在]高度に発達したバイオテクノロジー、その技術を人体に応用する医療現場で、すでにその問題は起こっている。「身体の一部を培養したり、他に移植した場合、それは一体誰のものなのか?」「自分から切り離された細胞組織はもはや“私ではない”のか?」 その問いに挑むべく、アリシアは、自分や他人の細胞を培養してアート作品を制作しているのだ。

『死と未来』展に展示されている作品。

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アリシア・キング

「シフターズ」

 生理食塩水で額を含まらせる「ベーグルヘッド」と呼ばれる日本の身体改造を扱っている作品。ここで表現されているのは、人間の変容というアイデアに伴う、テクノロジーと文化的な自己表現とのかかわりについての問いである。

アリシア・キング

「フレッシュトピア」

 十字架の形状になるように培養された細胞は、もともと、アリシア自身の太股の付け根から切り取られた皮膚、実験用のHeLa(ヒーラ)細胞、そして、匿名の提供された細胞を複雑に組み合わせて作られている。その制作行為そのものが「エフェメラル・フレッシュ・プロジェクト(短命な生きもの計画)」という作品となっているが、その成果ともいえる写真をさらに加工することで、培養された細胞は誰のものか、それは生き物か、あるいはただの物なのかという問いが増幅されている。

アリシア・キング Alicia King

バイオアート/美術家:オーストラリア生まれ、09年に論文「肉体のトランスフォーメーション;バイオテクノロジーによる決められた形からの変異 - 生物工学的実践と物質的、倫理的、儀式的な人間と動物の身体との芸術的探求における関係」でタスマニア大学博士号を取得。オーストラリアの「SymbioticA(シンバイオティカ)」にて、芸術研究のための生物工学プロジェクにかかわる。主な展覧会に「MONANISM」(MONA Museum, タスマニア)、「VISCERAL」(Science Gallery、ダブリン)など。人間の細胞を培養するバイオアートの作品は、MoMAの新刊書『Bio Design: Nature + Science + Creativity』でも紹介されている。


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