バイオ・アートの女神アリシア・キング、『死と未来』展に参加!!
「わたしの細胞は誰のもの?」
育ててわかる細胞培養アートの命題
[バイオ・アートの女神アリシア・キング]オーストラリアの女性アーティスト、アリシア・キングは、17歳のとき、頬の骨の異常を修正する大手術を受けた経験から、物質的な身体と“自分自身”との違和感を感じ始め、バイオテクノロジーを自らの身体で試みる人体実験的なアート作品の制作を始めた。
「自分から取り出されたものを独立して育ててみたかった。それは私の一部なのか、ただの物なのか? 確かめたかったの」
そう語るのは女性アーティストのアレシア・キング。彼女は自分の細胞組織を取って、培養するアート作品を2004年から制作している。彼女自身が説明している通り、人体組織がひとたび取り出されてしまったら、「それは誰なのか?」あるいは「誰のものなのか?」。そのような問題は、高度なバイオテクノロジーが医療現場で応用されるようになった近年、特に問題にされてきている。 「オーストラリアの研究所シンバイオティカの協力を得て、最初の作品は、HeLa細胞とマウスのハイブリッドを作ろうとしたの」
HeLa(ヒーラ)細胞とは、1951年に子宮頸癌で亡くなったヘンリエッタ・ラックスから採取され、人類最初の細胞培養株となったもの。数々の医療実験に利用されると同時に、個人の細胞の利用について倫理的問題も議論されてきた。そして、07年からアリシアは自分の細胞組織の培養も始めている。
「太股から3センチ×1センチ程度の組織を取って、育てた。最終的には4センチ×5センチ程度に。牙で噛み切った『バンパイア』の形にしたの。身体の拡張を意識していたけど、あとで他人の細胞の培養を始めてからの方がなぜか興奮したわ」
自分自身の細胞培養はパフォーマンスとしても行い、出来上がったものは滅菌して殺し、彫刻作品の一部に使っている。培養した細胞は法律的な問題で生きたまま研究所から持ち出せないのだ。しかし、アイルランドにあるサイエンス・ギャラリーでは、細胞培養を公開することが可能となった。
「人体組織銀行の4000ものサンプルから現在も生きている南アフリカの女性の細胞を選んで培養したの。他人の細胞を培養していると親近感が沸いて、自分の身体に取り入れてみたくなるから不思議ね」
そう語るアリシア、細胞培養の果てに見る未来のヒューマニズの登場に期待したい。
[ギャラリーに作られた培養タワーで育つ]アイルランドの「サイエンス・ギャラリー」に設置された約80センチのシリンダー。電極を介して電流が流され、培養液がポタポタと滴り落ちる。二重に仕切られたガラス容器の中で、人間の細胞が牙の歯形を模した形に育てられる過程が公開された。
[人体組織と私の存在]高度に発達したバイオテクノロジー、その技術を人体に応用する医療現場で、すでにその問題は起こっている。「身体の一部を培養したり、他に移植した場合、それは一体誰のものなのか?」「自分から切り離された細胞組織はもはや“私ではない”のか?」 その問いに挑むべく、アリシアは、自分や他人の細胞を培養してアート作品を制作しているのだ。
『死と未来』展に展示されている作品。
アリシア・キング
「シフターズ」
生理食塩水で額を含まらせる「ベーグルヘッド」と呼ばれる日本の身体改造を扱っている作品。ここで表現されているのは、人間の変容というアイデアに伴う、テクノロジーと文化的な自己表現とのかかわりについての問いである。
アリシア・キング
「フレッシュトピア」
十字架の形状になるように培養された細胞は、もともと、アリシア自身の太股の付け根から切り取られた皮膚、実験用のHeLa(ヒーラ)細胞、そして、匿名の提供された細胞を複雑に組み合わせて作られている。その制作行為そのものが「エフェメラル・フレッシュ・プロジェクト(短命な生きもの計画)」という作品となっているが、その成果ともいえる写真をさらに加工することで、培養された細胞は誰のものか、それは生き物か、あるいはただの物なのかという問いが増幅されている。
バイオアート/美術家:オーストラリア生まれ、09年に論文「肉体のトランスフォーメーション;バイオテクノロジーによる決められた形からの変異 - 生物工学的実践と物質的、倫理的、儀式的な人間と動物の身体との芸術的探求における関係」でタスマニア大学博士号を取得。オーストラリアの「SymbioticA(シンバイオティカ)」にて、芸術研究のための生物工学プロジェクにかかわる。主な展覧会に「MONANISM」(MONA Museum, タスマニア)、「VISCERAL」(Science Gallery、ダブリン)など。人間の細胞を培養するバイオアートの作品は、MoMAの新刊書『Bio Design: Nature + Science + Creativity』でも紹介されている。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。



コメント